Racing Diary 2003's Race

全日本ロードレース選手権 第4戦 鈴鹿200km

2003年5月24~25日 三重県 鈴鹿サーキット

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ケンツGSX-R1000惜しくも3連勝ならず!北川 僅差の2位!

  いつもお世話になっています。ケンツJトラストMOJO-WESTの北川圭一です。今回は今シーズンの全日本選手権ロードレースの、僕の参戦レポートです。
 レースが終わった翌日に、皆さんに報告させていただこうと思います。

  今回の全日本ロードレース第4戦は、8耐の前哨戦と言われている鈴鹿200km。その名のとおり、いつものレースの2倍近い、総レース距離200kmのレースなんですが、ある意味この200kmは、8耐よりもシンドいレースなんです。 

  8耐ならば、ライダーひとりの走行は約1時間。なのに200kmでは、ピットインした後にもライダー交代せずに自分で走るため、総走行時間は1時間20分ほど。もちろん、8耐ほど暑い時期ではないですが、長い時間を走っているという意味では、やはりシンドいレースです。

  8耐の前哨戦と言われるのは、もうひとつ。給油とタイヤ交換というピット作業をレース中にするからです。今年の8耐のレギュレーションにならって、今回は落下式のクイックガスチャージャーは使えないし、エアジャッキ式のマシンスタンドも使えない。だから去年よりもマンパワーが重要視されるレース。ライダーの体力も、ピットワークも、そういう8耐の準備を兼ねたレースが、この鈴鹿200kmというわけです。

 今回のレースに関しても、マシンに大きな変更はありません。ここまで2連勝できているので、マシンも徐々にセットアップが進んできたし、この200km用になにか特別なことをしたわけではありません。燃費とパワーのバランスとか、ガソリンをどれくらい入れてマシンの重量が変わったとき、どういうマシンの挙動になるか、というテストも、この200kmでするわけです。    

鈴鹿200km

  金曜と土曜の予選を通して、マシンのセットアップのテーマは、いかにタイヤを持たせる車体にするか、ということ。鈴鹿を200km、レース周回数は35周なので、もしピットインのタイミングを半分としても、17~18周のレースを2回するのと同じ。

  僕らのチームは、35周を25周と10周ぐらいの割合に分けて、ピットイン後のレース後半の10周で、少ない燃料の軽いマシンでスパートする作戦にしようということになっていたので、前半の20周+αをタレないタイヤで走りたい。そのために時間を使った、という感じでした。

A/Bグループに分かれての予選では、土曜午前のA組セッションでヨシムラの渡辺 篤選手がタイムを2分08秒台に入れてきました。僕はB組で2分09秒453。ただ、今シーズンはレースウィークの総使用タイヤ本数が4セットと決まっているので、午前1セット、午後1セット、そして決勝で2セット、の予定。とにかく予選は、アタックというより、決勝で使えるタイヤを見つけておくことと、ある程度使ったタイヤで、どれくらいのペースで走れるか、ということを見極めるのが先。アタックは、それからでいいんです。

  そして午後は、しばらく午前に履いたタイヤで走行して、ピットイン。ただ、タイヤ交換前の、午前もあわせて15~16周走ったタイヤでもいいペースで攻めることができていたので、車体はほぼOK。

  タイムアタックしなかったのは、決勝用のタイヤでのセットアップがキチンと出ていたので、一発のアタックをする必要がなかったからです。すべては決勝レースのため。結局、午前のタイムをさらに伸ばして、2分09秒035で予選総合は4番手。レースでの必須条件だと思っているフロントローには入れたので、まずはよし。順位よりも、予選で思っていたセットアップが進められたのがよし、です。

  予選が終わってからは、ミーティングをして明日の仕様を決めて、夜にはスタッフみんなでピットワークの練習です。

  ピットに入って、前後のジャッキを掛け、タイヤを前後交換してガソリン補給、という練習を繰り返し、繰り返し練習。結局サーキットを出たのは夜10時過ぎでしたけど、繰り返すたびにスタッフの作業も流れがよくなって、やっぱりこのレースが8耐の前哨戦なんだ、という気合が入ってきました。

  去年とはチームスタッフが大きく変わったので、ピット作業が初めて、というメカニックもいたんですが、こればっかりは練習を繰り返して作業を早くするしかありません。

  僕がホテルに帰った後も、スタッフはピットワークの練習をしてくれていたようです。これがケンツのチーム力。本当にありがたい。

鈴鹿200kmならではのピットワーク

  日曜の決勝は少し曇り空でしたが、なんとかドライのままレースができそうでした。午前には冷たい風が強くなっていたんですが午後には止み、JSB決勝の頃はほぼカンペキなドライコンディション。今回はお客さんもけっこう入っていて、スタート前から気合の入るレースになりました。

  決勝レースは14時25分開始。スタートはいいダッシュが切れて、うまく前に出ることができました。1コーナーで井筒選手(ホンダ)に先行されましたが、江口選手(ホンダ)、中富選手(ヤマハ)を抑えて2番手で1コーナーへ。そのまま1周目に伊藤選手(ホンダ)が出てきて、1周目は伊藤選手に続く2番手で終わりました。伊藤選手のマシンはTSRホンダ製のXフォーミュラマシン。軽量な上、パワーの改造制限も少ないため、予選からマークしていた選手のひとりでした。このまま序盤は伊藤選手、井筒選手、中富選手、辻村選手(ホンダ)に渡辺選手が加わって6人ぐらいがトップ集団。序盤から伊藤選手、井筒選手、それに渡辺選手とバトルになりましたが、このレースは先にトップに立っても逃げられないし、うまくペースもつかめない。無理をしてタイヤを消耗するより、だれかの後ろについてペースを見ておくのが一番いいんですが、やっぱり抜きつ抜かれつになりました。周回タイムは09秒中盤から10秒前半。予想ではも少し速い周回タイムだと思っていたのですが、やはりレースとなるとこうなってしまいます。 

  レースは中盤あたりまで、伊藤選手、渡辺選手、そして僕がかわるがわるトップに立つ展開。ヨシムラのマシンはストレートで速いし、TSRのXフォーミュラマシンは軽くてタイヤの負担が軽そう。そうやって周りの走りを見ながら、わりと冷静に周回できていました。勝負はやはり後半。ピットに最初に入ったのは、井筒選手でした。

  井筒選手は19周目にピットイン。それから20周目に渡辺選手、伊藤選手、22周目に辻村選手がピットに入り、僕も予定通り23周目にピットへ。

  この中では、渡辺選手以外はタイヤ交換をせずに出てきたので、やはりマークするのは渡辺選手。タイヤ交換のタイムロスと、それをフレッシュタイヤで挽回できるか、というシミュレーションをして、やはりタイヤ交換をしたほうが速い、という選択をしたのが、ヨシムラとケンツだった、というわけです。 僕のピット作業もスムーズに進んで、コースインしたときには6番手。ここからフレッシュタイヤでの追い上げです。予想よりちょっとトップとの差が離れていましたが、とにかく残り10周でガンガン抜きまくるだけです。

  この時点でトップに立った渡辺選手まで約6秒。まずは4秒前を走っていた辻村選手を31周目に抜き、次の周に井筒選手をパス。これでトップの渡辺選手まで3秒。僕が渡辺選手より1秒近く速いんですが、なんせ残り周回は3周。とにかくガンガン全開で、イケイケです!  

  渡辺選手との差を示すピットボードが1秒5を示した時点でファイナルラップへ。見えている渡辺選手の背中目指して、S字で、ダンロップ下で、デグナーで、スプーンで、ヘアピンで差を詰めて、バックストレートを終えて130R、そしてシケインへ。

  しかし、あとほんのわずか届かずに、結局0秒2差で2位に終わってしまいました。130Rで背後につけて、シケインでイケる、と思っていたのですが、ほんのちょっと、ほんのちょっと届きませんでした。

  でも、精一杯やりました。マシンもほどほどキメられたし、レース中に大きなミスもなく、ピットワークも速かった。ただ、ピットアウト後に渡辺選手よりもソフトなタイヤを履いて出て行ったんですが、このニュータイヤでペースを上げるまで、ちょっとだけ時間がかかってしまった。

  しかし、本当に精一杯やっての2位なので、これはしょうがない。走っていて楽しかったし、お客さんも喜んでくれていたみたいだし、シリーズチャンピオンを考えても、ここでの2位は大きい。3連勝ならなかったのは悔しいですけど、それを反省材料に、このあとの全日本、そして8耐へつなげたいと思います。

  8耐は藤原克昭選手と7年ぶりにペアを組むことが決まったので、速いマシン、速いペアライダー、そして最高のチームワークで8耐悲願の優勝を狙っていきます!

  それと、レース終了後のクールダウンラップのとき、ライダーみんなでシケインに止まって、MotoGP開幕戦の事故で命を落とした、大ちゃんこと加藤大治郎選手に挨拶をしてきました。

  あの事故の後、本当に考えさせられることが多くて、ライダーみんなで筑波でミーティングを開いて、ああいった悲しい事故が2度と起きないように、選手側から主催者やサーキットに働きかけて行こう、というアクションを起こすことになりました。

  この鈴鹿200kmでも、予選日に鈴鹿サーキット、MFJの代表者と、ライダー代表何人かでコースを回り、ライダーが危険と考えているところを実際に指摘して、改善するようにお願いもしてきました。

  ライダーも、自分たちで自分の身を完全に守ることは出来ないけれど、少しでも危険を減らそう、という動きをしていこうと思っています。

  ともあれ、鈴鹿が終わったあとは、次の全日本第5戦まで、ほぼ1ヶ月半あります。8耐のマシンづくりやテストと、なかなか休む日は多くありませんが、まずは8耐優勝に向けて、できる準備を始めようと思います。

  これからも、北川圭一と、ケンツJトラスト&MOJO-WESTの活動に、ご理解、ご声援をお願いします!

'03.5.26
北川圭一選手より
川島賢三郎 ケンツJトラストMOJO-WEST チーム監督
いやぁ残念!ホントもう少しだったね。だけど今日の北川の走りはお客さんにすごいアピールできたと思う。さすが北川、レースの醍醐味を見せたよね。まあ、3連勝はならなかったけど次のもてぎは必ず勝ちますよ!
RESULT
順位 ライダー マシン
優 勝
渡辺 篤
スズキGSX-R1000
2位
北川 圭一
スズキGSX-R1000
3位
井筒 仁康
ホンダCBR954RR
4位
辻村 猛
ホンダCBR954RR
5位
山口 辰也
ホンダCBR954RR
6位
民辻 啓
スズキGSX-R1000
7位
江口 馨
ホンダCBR954RR
8位
奥野 正雄
ホンダCBR954RR
9位
中村 健一郎
ホンダVTR1000SP2
10位
時永 真
ヤマハYZF-R1-7

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