■ベストレース。鈴鹿300km耐久
続く鈴鹿300kmは、走る前から厳しいことがわかっていたレースでした。去年までは鈴鹿200kmとして行われていたこの300kmですが、今年は全日本選手権から外れた、単独のレースイベント。走行距離が300kmに伸びることで、タイヤ交換、ガス補給に加えて、ライダーチェンジもあるという、まさに8耐の前哨戦にふさわしいレースに変わったのです。
そして僕は、このレースを一人で走る事に決めました。発表したとおり、今年の8耐も、去年と同じくワールドスーパースポーツに出場している藤原克昭とコンビを組みます。ならばカツアキが帰ってきてテストをするまでに、マシンの準備をしておこうと思ったし、カツと僕以外のライダーを、この300kmのためだけに呼んでも仕方ない、と思ったんです。
マシンは当初、8耐で出るスーパーバイク仕様で300kmも参戦する予定だったんですが、これも今のチーム事情もあって、JSB仕様で整備を済ませるのが精一杯。ならばJSBマシンでたっぷりデータをとっておこう、ということになりました。ケンツは300kmで、エントリーリストには「SB」エントリーになっていましたが、じつはいつもの全日本に出ているJSBマシンとまったく同じだったんです。
レースでは、決勝までにどんどんマシンが決まり、とてもいいフィーリングで決勝を迎えることができました。なのに、決勝日朝のフリー走行で、いきなりエンジンブロー。せっかくセットを詰めてきたエンジンだったんですが、ここで急遽スペアエンジンに載せかえることになりました。
いつもの全日本とは違って、今回の300kmは、土曜にフリー走行と予選があって、日曜に決勝というキツキツのスケジュール。しかも決勝朝のフリーから決勝まで、わずか1時間チョイしか時間がない。けれど、人がいなくて苦しいはずのチームのみんなが、監督まで一緒になってエンジンの載せかえ作業をしてくれて、なんと決勝までにスペアエンジン搭載車が出来あがりました。
考えてみれば、ブローしたエンジンも、予選中に壊れたらタイムアタックができなかっただろうし、もちろん決勝中だったらこの300km参戦がまったくの無駄になってしまう。その意味では、いちばん影響のないタイミングでエンジンが壊れた、ということ。プラス思考でいかなきゃね。
決勝は、ポールからスタートした宇川&井筒(ホンダ)のホンダワークスチームとの闘いになりました。スタートライダーの宇川が速く、しかもラクにタイムを出しているな、という印象。向こうはスーパーバイクで、僕はJSBという決定的ハンデもありましたが、載せかえ前のエンジンだったら、もっと違う展開になっていたと思います。
レースは、スタートから飛び出した宇川がペースをつくる展開で、序盤はついて行けた僕も、さすがにホンダワークスのスーパーバイクは速い。なんとか前に出てペースを抑えてやろう、とムキになって宇川をパスするんですが、その都度すぐに抜き返されてしまう苦しい展開でした。10周目あたりからはジリジリ離されて、あとの僕の仕事は、300kmをいかにミスなく走りきるか、ということ。この日はキッチリ晴れて、8耐本番にかなり近い暑いコンディション。ル・マンで2時間連続走行した僕も、ペースを考えなきゃヤバい、って感じでした。
結局、ホンダワークスには離されたものの、キッチリ走り切って2位入賞できました。エントリーではSB仕様になっていましたが、JSB仕様にエントリーし直せていたら、ブッチギリでJSBクラス優勝ですよ。300kmをひとりで走りきれたことも大きかったし、結果も残せた、今シーズンはじめて納得行く走りができたレースになりました。
■もてぎで上昇気流に乗って行くはずが…
300kmが終わった2週間後には、もてぎです。これが8耐までの前半戦終了ってことで、まずはここを越えて8耐へ臨みたいレースでした。マシンの方向も決まり始めたし、鈴鹿で結果も出せたことだし、シリーズのことを考えた上でも、ここで勝っておきたいレース。なんせ、鈴鹿300kmはシリーズ戦ではなかったので、ポイントは加算されませんからね。
ここもてぎは去年、大ブッチギリで勝てたレースなので、得意だし、事前テストでもいいタイムが出ています。金曜から去年と同じような走りができて、あとはタイヤを決めていけば、自分の走りができる、と手ごたえがあったレースでした。
けれど、予選ではタイムが出ない。タイヤを選びながら午後にはなんとかアタックできましたが、タイムはポールからほんの0秒8とはいえ、2列目7番手。レコード更新のタイムですが、自分的にはもう少し行けたかな、って状態でした。
そして決勝レース。サイティングが終わってグリッドについて、さぁスタート、という時に事件は起きました。
シグナルが消えて、いざクラッチミート。しかし、マシンが前に出ない!
「しまった、ニュートラル!」と思ってシフトペダルを掻き上げだら、そのままものすごいショックでスタートできたんですが、順位は大きく出遅れ。しかも、スタート時のトルクでスプロケットが歯こぼれを起こしたらしく、残念ながらそのままリタイヤ。グリッドに着いている時に確実にミッションはローに入れているし、なぜニュートラルに入ったのかわからないんですが、なんとも消化不良なレースになってしまいました。だって、レースしていないんですから。
でも、このアクシデントで不運はオシマイ。僕とケンツのアンラッキーはここで出尽くした、って思うことにして、あとはもう8耐に向かって全力で進んで行こうと思っています。
■耐久へ向けて。去年の忘れ物を取りに行きます!
もてぎが終わってからは、スズキのテストコースでのテストや、ダンロップ主催の鈴鹿テスト、スズキ占有の鈴鹿テストなど、みっちりマシンを仕上げることに集中しています。カツアキも6月末のダンロップテストから合流して、僕のGSX−Rを、「僕とカツのGSX−R」に仕上げているところです。タイヤを選んだり、燃費チェックをしたり、データをどんどん集めているところですが、かなりいい手応えを感じています。
なんといっても8耐は、去年のラスト1時間まで独走でトップを走っていて、いきなり地獄に叩き落されたようなレースでしたから、チーム全員で、あと一歩でこの手にできるはずだった「8耐優勝」というでっかい勲章を取りに行こうと思っています。7月最終週までにとにかく準備をぬかりなくやっておいて、全員で8耐を戦います。
チームは、いつもの全日本から応援してくれている、アート引越しセンターと、G’ZOXさんがバックアップしてくれて「アート0123ケンツMOTULスズキG’ZOX」というチーム名で戦います。
応援よろしくお願いします!
From北川圭一
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